妊娠で糖尿病に苦しむ人は食事を替えれば赤ちゃんを元気に出産できる

妊娠中にのみ発症する糖尿病を妊娠糖尿病といいます。そして、通常の糖尿病とは区別します。妊娠をすると、12%の妊婦さんが、この妊娠糖尿病を発症します。

確率でいえば、約8人に1人の割合で起る事になります。

糖尿病の親族がいないのに、低カロリーの食事をしているのに、といった全く糖尿病に縁のない妊婦さんにも発症する可能性があるのが妊娠糖尿病です。

これまでの診断基準では、わが国の妊娠糖尿病の頻度は2.92%でしたが、2010年7月に大規模な診断基準の変更があったため、妊娠糖尿病の頻度は12.08%と4.1倍に増えることがわかりました。
ただし、この数字は全員に75gぶどう糖負荷試験を行った場合の数字ですので、スクリーニング陽性者のみぶどう糖負荷試験をしたときは、これより若干少なく7〜9%の頻度になります。

妊娠糖尿病・妊娠学会「糖尿病と妊娠に関するQ&A」岡山大学 平松 祐司

原因は、お母さんの体が血糖値を下げるホルモンを出しているのに、赤ちゃんが血糖値を上げるホルモンを出して邪魔してしまうからです。その為、お母さんは上手く血糖値のコントロールが出来なくなってしまいます。

ですから、通常の糖尿病とは違い、お母さんには異常がないことも多いのです。そのため、血糖値さえ上手くコントロールできれば、元気な赤ちゃんを産む事が出来ます。

この記事は、その妊娠糖尿病についての現在一般的に行なわれているカロリー制限を中心とした食事療法と、インスリン治療について紹介しています。

そして、妊娠糖尿病が思うように改善せずに苦しむ妊婦さんにとって、光明を見いだすかもしれない新しい食事療法についても紹介しています。

カロリー制限などの食事療法、インスリン治療が上手くいかない、妊娠してから太ってしまってとても不安になっている、などと言う人は、今までにない別の選択肢も出てきた事を知ってもらいたいと思います

この記事を読むことで、多くの妊婦さんが妊娠糖尿病の苦しみから解放されるきっかけとなる事を願っています。

目次

妊娠で糖尿病になった時の食事、食べていいもの、食べてはいけない物より、カロリーと栄養素を調べる

妊娠糖尿病の食事は、基本的には食べていいもの、食べてはいけないものはありません。

というのは、いま糖尿病の食事はカロリー制限という考え方が基本です。1日のカロリーの上限を超えなければ何を食べてもいいという考え方です。カロリー制限で血糖値をコントロールするのです。

しかし、カロリー制限をしても栄養はかたよってはいけないと言われています。3大栄養素である、たんぱく質、脂質、炭水化物の摂取量は2:2:6の割合でバランスよく摂りましょう、というのが基本の考え方です。

自分の身長と体重から、どれだけのカロリーの食事をしていいのかを知る

妊娠で糖尿病が疑われたら、まずは食事でのカロリーをコントロールします。

でも、一日にどれだけのカロリーを摂ればいいのかわかりませんね。それは人はよって違うからです。体の大きい人と、体の小さい人が同じだけの食事をしていいわけがありません。

そこで自分の体重から、一日にどれだけのカロリーの食事をしていいか計算をします。

まず、自分の身長から理想の体重を計算します。理想の体重とは、人間が長生きできるための理想の体重と言われています。

その理想の体重と、自分の体重が、どれだけ近いか、どれだけ離れているか、それを判断するためにBMIという数字を計算します。BMIの数字は、以下のような式で計算できます。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

もし、62kgの体重で、165cmの身長だとしたら、BMIの値は以下のようになります。身長はmに直しますので、1.65mになります。

BMI=62.0(kg)÷1.65(m)÷1.65(m)=22.77

そして、BMIが25以上であると、肥満であると判断します。理想の体重はBMIが22になる数字です。計算式は、以下の通りです。

理想の体重=身長(m) x 身長(m) x 22

身長が165cmの場合、1.65 x 1.65 x 22 = 59.89kgが理想の体重です。

この理想の体重は、標準体重と呼ばれ、産婦人科学会診療ガイドラインによると次のような目標を示しています。

普通の体格の妊婦(妊娠前のBMIが25未満):標準体重 x 30kcal + 200kcal
肥満の体格の妊婦(妊娠前のBMIが25以上):標準体重 x 30kcal

上記の例で言えば、BMIは22.77なので普通の体格の妊婦のカロリー目標を採用します。そして、1日に目標とするカロリーは、

標準体重の59.89 x 30 = 1796.7kcal

ということになります。

妊娠中の食事は、高血糖の予防と、血糖値の変動を少なくする為に食事の回数をできるだけ増やすような分食がよいとされています。4回から6回という分割食を指導されます。

食べたいと思う食事のカロリー、栄養素はどれくらいあるのか知っておく

では、どんな食事が、どれだけのカロリーがあるのでしょう。

多くの人が、食べたいと思う食事のカロリーをざっと調べたところでは、以下のような数字になります。

数字は、特に指定していなければ100g当たりのカロリー、100g当たりのたんぱく質、脂質、炭水化物をグラム単位で表記してあります。

どういう食事が、どれくらいの量で、どれだけカロリーがあり、どういう栄養素があるのかを調べておけば、外食の時でも、カロリー上限を超えないように調整する事もできます。

今は、外食のメニューにカロリー表示がありますので、それを目安に食事を選ぶのもいいでしょう。

干し芋
303kcal タンパク質3.1g 脂質0.6g 炭水化物71.9g

日本食品標準成分表 食品番号: 02009 食品群名/食品名: いも及びでん粉類/(さつまいも類)/さつまいも/蒸し切干

ミスタードーナツ(ミスド)
オールドファッション 328kcal タンパク質3.3g 脂質21.9g 炭水化物28.6g
フレンチクルーラー170kcal タンパク質1.4g 脂質11.1g 炭水化物15.8g
ハニーディップ230kcalタンパク質3.7g 脂質13.0g 炭水化物24.1g

ミスタードーナツ 栄養成分情報

ミネストローネ
34kcal タンパク質1.77g 脂質1.04g 炭水化物4.66g
Basic Report:  06440, Soup, minestrone, canned, prepared with equal volume water

麦ご飯
159kcal タンパク質15~34g 脂質13~20g 75~105g
カロリーSlism 麦ご飯

もずく酢
38~44kcal 栄養素の記載なし
簡単!栄養andカロリー計算 もずく酢

ヤクルト
Newヤクルト 65mlあたり 50kcal タンパク質0.8g 脂質0.1g 炭水化物11.5g
Newヤクルトカロリーハーフ 65mlあたり 25kcal タンパク質0.8g 脂質0.1g 炭水化物5.7g
内容成分・アレルギー表示 | ヤクルト本社

ヨーグルト
62kcal タンパク質3.6g 脂質3.0g 炭水化物4.9g
日本食品標準成分表 食品番号:13025 食品群名/食品名: 乳類/(発酵乳・乳酸菌飲料)/ヨーグルト/全脂無糖

リンゴ 酢
26kcal タンパク質0.1g 脂質0g 炭水化物2.4g
日本食品標準成分表 食品番号:17018 食品群名/食品名: 調味料及び香辛料類/(食酢類)/果実酢/りんご酢

パン
269kcal タンパク質35.7g 脂質3.5g 炭水化物51.1g
日本食品標準成分表 食品番号:01033 食品群名/食品名: 穀類/こむぎ/[パン類]/ぶどうパン

パスタ
165kcal タンパク質5.4g 脂質0.9g 炭水化物32.0g
日本食品標準成分表 食品番号: 01064 食品群名/食品名: 穀類/こむぎ/[マカロニ・スパゲッティ類]/マカロニ・スパゲッティ/ゆで

納豆
200kcal タンパク質16.5g 脂質10.0g 炭水化物12.1g
日本食品標準成分表 食品番号: 04046 食品群名/食品名: 豆類/だいず/[納豆類]/糸引き納豆

インスタント ラーメン
436kcal タンパク質8.4g 脂質18.9g 炭水化物58.1g
日本食品標準成分表 食品番号: 01060 食品群名/食品名: 穀類/こむぎ/[即席めん類]/中華スタイル即席カップめん/油揚げ、焼きそば

アイスクリーム
180kcal タンパク質3.9g 脂質8.0g 炭水化物23.2g
日本食品標準成分表 食品番号: 13043 食品群名/食品名: 乳類/(アイスクリーム類)/アイスクリーム/普通脂肪

妊娠糖尿病は、血糖値の正常値の上限を知り、食後2時間後の血糖値がそれを超えないようにする

糖尿病では、血糖値の正常を知っておく事が大事です。そして、食後の血糖値がピークになる食後2時間後の血糖値が、その値を超えないようにします。

これはとても大事な事で、食後の血糖値のピークが、正常値の範囲を超えないようにする事です。

食後のピークの血糖値は1時間?それとも2時間?

統計的には、糖尿病ではない正常な人については食後1時間が血糖値のピークになるようです。一方、糖尿病を発症している人は、それが2時間後までずれ込むことが多いと言う事です。

その為、食後2時間後の血糖値より1時間後の血糖値がピークではないか、と迷う人もいるようです。

実際、糖尿病を発症していても、人によって違いがあるようです。それは糖尿病の人でも、血糖値を下げるインスリンの作用に違いがあるからです。

糖尿病でも症状の軽い人は、ピークが1時間に近いでしょうし、症状が重い人は、ピークが2時間に近くなってくると言う事です。

したがって、自分の血糖値のピークが1時間か、それとも2時間かというのは、両方の値を計ってみて、どちらか高い方を自分の基準とするのがよいようです。

食後2時間後の血糖値を計ると言うのは、糖尿病のガイドラインにも記載があります。どちらにしても、食後の血糖値のピークが、正常範囲を超えないようにすると言うことは頭に入れておきましょう

正常な血糖値の範囲は、どれくらいか?低すぎても高すぎてもいけない

糖尿病の治療には、この血糖値を把握すると言う事がとても大事です。では、どれくらいの血糖値を目指すべきなのでしょう。

4. 妊娠中の血糖値はどれくらいがいいのですか?

現在、世界的に推奨されている血糖コントロール許容値は食前血糖値100mg/dL未満、食後1時間血糖値140mg/dL未満、食後2時間血糖値120mg/dL未満です。この目標値を達成するためには外来で血糖値を測定するのみでは不十分であり、血糖自己測定により日常生活での血糖値の変動を把握して、治療をすすめることが大切です。

妊娠糖尿病・妊娠学会「糖尿病と妊娠に関するQ&A」板橋病院 佐中眞由実

血糖値を自分で計ろうとすると、専用の機器、針、試験紙などが必要になります。実際に食事をした後に血糖値を計る事で、どういう食事が自分にとって血糖値の変動が少ないものなのかが分かります。

しかし、毎回は針を自分の体に刺し、血液を摂って、自分で血糖値を測る事はとても大変です。しかも、食事制限の段階では、血糖値を計る機器などは実費になってしまいます

インスリン療法が始まって、初めて血糖値を計る機器は保険の適用になります。

その為、実費をかけて実際に、自分で採決して血糖値をはかっている妊婦さんはとても少ないと思います。

これが、食事療法の上手くいかない理由でもあります。カロリー制限をしても、実際に血糖値のコントロールが上手くいっているか、それが分からないのです

妊娠糖尿病で血糖値が下がらないときは、インスリンで強制的に血糖値を下げます

食事によるカロリー制限を行なっても、人によっては血糖値が正常値をどうしても超えてしまう人がいます。

それは、カロリー制限を行なったからと言って、必ずしも血糖値のコントロールが上手くいくとは限らないからです。

そういう人は、インスリン注射によって強制的に血糖値を下げるよう医師から指示をされます。

妊娠で糖尿病の治療にインスリンを導入する基準とは?

妊娠で糖尿病になった時、カロリー制限などの食事療法が上手くいかない場合は、インスリン治療に入ります。

インスリンを注射する場所は、筋肉に注射してしまわない部位が選ばれます。多くはお腹だそうです。お腹をつまんで、注射しやすいということでしょう。

では、インスリンを打つ基準となるのは、どういった判断なのでしょう?それは医師によりますが、食事療法で、先程の妊娠中の血糖値を下回る事ができないと判断したときです。

特に血糖値の数値がというわけではないようです。ですから、インスリン療法を勧められる妊婦さんは、その曖昧ともいえる基準に納得できない場合があるようです。

その為、妊婦さんの中には、インスリンは避けて、食事療法を継続したいと望む人も少なくないようです。より厳密にカロリー制限の効果を確認する為に、自費で血糖値の自己測定を始めたりするのです。

妊娠で糖尿病のインスリンは、いつまで続けるのか?

インスリン治療は、原則的に出産まで続きます。何故なら、食事療法が上手くいかなかったときの最後の手段がインスリン治療だからです。

インスリンを止めれば、血糖値のコントロールができないということですから、出産まで続けなければいけません。

しかし、通常の糖尿病に比べて、妊娠糖尿病でのインスリン治療はなかなか困難を極めます。中にはインスリンが効かないという人も多くいるのです。

通常の糖尿病ではインスリン治療はごく普通に行なわれ、インスリンを注射すれば血糖値は下がります。

しかし、この妊娠糖尿病では、インスリンを打っても血糖値が下がらないと言う事が普通にあるのです。それは何故なのでしょう?

妊娠で糖尿病になってインスリンが効かないと出産を諦めかけた人も、赤ちゃんを元気に出産できる新しい方法がある

妊娠で糖尿病になった場合、実はインスリンは不足していません。ただ、妊婦さんはインスリンが効きにくい体質になっています。これが、普通の糖尿病と妊娠糖尿病の大きな違いです。

妊婦さんの体の中では、インスリンを注射するまでもなく、正常にインスリンがでているのです。しかし、妊娠中には耐糖能とよばれる能力が下がって来る為に、インスリンが効きにくくなるのです。

妊娠糖尿病診断基準になっている75g経口糖負荷試験3人の例です。

36歳
BMI 18.4 妊娠初期の随時血糖値91mg/dl
負荷前 空腹時血糖値68以上 インスリン5.6(μU/ml)
負荷後 1時間値 236 インスリン 64.5
負荷後 2時間値 230 インスリン 133.1

31歳
BMI 24.0 妊娠初期の随時血糖値83mg/dl
負荷前 空腹時血糖値94 インスリン6.8(μU/ml)
負荷後 1時間値 181 インスリン 148.2
負荷後 2時間値 122 インスリン 88.6

30歳
BMI 18.4 妊娠初期の随時血糖値91mg/dl
負荷前 空腹時血糖値91 インスリン5.8(μU/ml)
負荷後 1時間値 187 インスリン 98.6
負荷後 2時間値 141 インスリン 130.4

宗田哲男著 「ケトン体が人類を救う」
第7章 妊娠糖尿病とはいったい何か

すると、インスリンが効かない体に、尚、インスリンを投与するというのはおかしい気がします

そして、実際にインスリンが効かない為に、血糖値のコントロールが出来ないと判断されて、出産を諦めてしまう人もいるのです。諦めると言うより、医師がそのように薦めるのです。医師の手に負えないと判断されるのです。

しかし、実は血糖値は、糖質を口にしたときしか上昇しません。実は、このことは最近までわかっていませんでした。

参考資料 低糖質ケーキは血糖値を上げにくい

ですから、糖質を摂らなければ血糖値はあがりません。カロリー制限もインスリン注射も効果がない人は、ここに注目すべきです。

ごはんとサーロインステーキ、血糖値を下げるのはどっち?

2型糖尿病・体重64kgの人の場合(測定結果)

白米茶碗1杯150g 252kcal 糖質55.3g => 血糖値の上昇166mg
サーロインステーキ1枚200g 約1000kcal 糖質1g未満 =>血糖値の上昇3mg

宗田哲男著 「ケトン体が人類を救う」
第6章 栄養学の常識は、じつは間違っている!より抜粋

血糖値があがらなければ、下がらないときのことは考える必要がありません。

しかし、今度は血糖値が下がりすぎることを危惧する人もでてきます。低血糖はエネルギーが不足してしまうので、これも好ましくないことは事実です。

ところが、糖質以外のたんぱく質や脂質を摂ることで、エネルギー不足はまかなえます。これが新しい食事療法、糖質制限の基本的な考え方です。

糖質を摂らなければ血糖値は上がらない。たんぱく質と脂質を摂っていればエネルギー不足にならない、ということです。

つまり、正常な血糖値を維持できるようになるということです。

もともと妊娠の時に糖尿病になるのは、一般的な糖尿病と区別されます。それは、妊娠の時に糖尿病になる妊婦さんは、インスリンの分泌は正常だからです。

ということは、妊娠糖尿病に限って言えば、妊娠中だけ糖質を控えて血糖値をあげないようにすると言うのは、とても理にかなっている事ではないでしょうか。

栄養素が血糖に変わる速度

Life with Diabetes 糖尿病教室パーフェクトガイド
アメリカ糖尿病協会発行、池田義雄監訳ほか より引用

いきなり糖質制限というと抵抗がある人も多いかと思います。しかし、食事療法などが上手くいっていない、自分の食べたいものが食べられなくてストレスが溜まっているというような方は、手始めにちょっとした食事を糖質の少ない物に変えて、自分の体の変化を見てみるのもよいと思います。

国立研究開発法人国立循環器病研究センターでは、従来の糖尿病の食事に対して、上記のような新しい食事法が提唱され、効果を上げてきていると言う旨の発言があります。具体的には、炭水化物(糖質)制限食、血糖値が上がりにくい低GI食などのようなものです。

参考 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス 糖尿病の食

以下に紹介するサイトでは、糖質の少ない食品を扱っています。例えば、食パンは通常100gあたり269kcalで炭水化物51.1gです。

ところがここで扱う食パンのカロリーは100g当たり196kcalで糖質はわずか5.6gです。

アイスが食べたいと思ったら、ここのアイスクリームならカロリーが100g当たりに換算すると113kcal糖質は5.27gです。

糖質制限ドットコム

もし、このような食事で血糖値が正常化してくるのなら、他の食事も糖質を少なくしてみるという方法でもよいかと思います。

妊娠の時に糖尿病になるなら、妊娠のときだけ糖質を制限して解決策を模索する

しかし、糖質制限という考え方には、それを推奨する医師と、それを全く推奨しない医師に分かれてしまいます。

二つの異なる考え方を持つ医師がいますが、どちらが正しくて、どちらが間違っていると言うことではないと私は考えます。

食事療法が上手くいかない妊娠糖尿病の方もいれば、インスリン療法でも血糖値が正常にならない妊婦さん達もたくさんいます。

そういう困っている人たちの新たな選択肢として考えるべきだと思います。そういった可能性を全く排除してしまう事は避けるべきだと思います。

食事療法が上手くいかず、インスリン療法も結果が出なければ、医師としては出産を諦めてもらうか、別の病院への転院を薦めるかの選択を迫るということもあるのです。

つまり、その医師が行なっている治療では、正常な出産を保証できかねると言っているのです。

その場合、あなたなら出産を諦めますか?妊娠中絶を素直に受け入れられますか、ということを問うている事になります。

それが出来ない妊婦さんもたくさんいるのが現状のようです。だから、その他の選択肢もある事を知っておく事は、決してマイナスにはならないことでしょう。

妊娠糖尿病で糖質制限が危険だと考える医師がいるのはどういう理由からでしょう?

それは、糖質以外のエネルギーである脂質やタンパク質からエネルギーを作るとケトン体という副産物ができてしまい、それが赤ちゃんに悪い影響を与えると考えているからです。

そもそもは、体の中にある血糖値が高くなり、インスリンなどが上手く作用しなかったり、インスリン自体が少なかったりする事で、エネルギーが体に取り込まれなくなると言う状態が始まりです。

体にエネルギーが不足するので、体は別のエネルギーを探してこなければいけません。そこで体脂肪などをエネルギーに変えようとする訳です。

その脂肪を分解する時に出てくるのがケトン体と呼ばれる物です。

ケトン体という副産物が血液の中にたくさん出てくると、体の中の血液が酸性に傾くとされています。この状態をケトアシドーシスといいます。

そして、体の血液を酸性に傾かせようとする事をアシドーシスといいます。

高血糖でケトン体が高値を記録すると、色々と問題が出る事が分かっています。

糖尿病ケトアシドーシス

インスリンが不足すると、血液中のブドウ糖を代謝できなくなり、高血糖状態になります。すると、体はその代わりに脂肪を分解してエネルギーをつくり出します。このときに副産物としてつくり出されるケトン体が血液中に急に増える(高ケトン血症)ことで、血液が酸性になり(ケトアシドーシス)、体に異常が発生するというしくみです。 その多くは1型糖尿病でみられ、近頃は清涼飲料水を多飲する2型糖尿病でもみられ、ペットボトル症候群(清涼飲料水アシドーシス)と呼ばれています。

糖尿病がよくわかる DMTOWN 「糖尿病合併症を知りましょう」

体内のケトン体の数値が高いと危険という誤解

しかし、多くの人は、これを誤解して解釈しています。

アシドーシスとは、ケトン体と呼ばれる物質が体内に増えた状態だと思いがちですが、実際は、「高血糖状態であると、体内のケトン体の数値も高い」ということです。

つまり、血糖値が高いまま下がらない状態があって、そのため、不足したエネルギーを脂肪から分解して作り出そうとするということです。

従って、問題なのは高血糖ということです。ケトン体の数値が高いと、高血糖になるわけではありません。また、ケトン体の数値が高いと、同時に高血糖であるわけでもありません。

従って、高血糖でなければ、ケトン体の数値が高くても問題ないといえるのです。実際にそのような状態があるのか、というそれがあるのです。

それがつわりの時の妊婦さんです。つわりで食事ができない、というお母さんは多いかと思います。食事をしないとお腹の子供に悪影響があると考えがちです。

しかし、食事をしなくても、お母さんは、自分の体脂肪からエネルギーを作り出し、それをお腹の子供に与えています。

その証拠に、実際に妊娠中の妊婦さん達の協力で、血液中のケトン体の数値を計ると、妊娠糖尿病でなくても、全てのお母さんのケトン体の数値が高くなると言う事が分かってきたのです。

また、妊娠糖尿病ではなく、そもそも妊娠する前からの1型糖尿病の人も、糖質制限で良い結果を出しているという実例があります。 その実例については、下で紹介する本に詳しく書かれていますので、読んでみることをお勧めします。

もちろん、その人に当てはまる事が、他の人も同様に当てはまるとは限りません。しかし、カロリー制限による食事療法がうまくいかないケースも相当ある事を忘れてはいけません。

そもそも、カロリー制限やバランスのよい食事で糖尿病が改善されるという長期的エビデンスはありません。そのような治療が、昔から行なわれてきたと言うだけに過ぎません。

そして、妊娠中の糖尿病に限っては、お腹の子供の事を考えるとカロリーを制限するのは本当に正しいのか、という疑問がわいてきます。

母親ならできるだけお腹の子供には、栄養を与えたいと思います。それなら血糖値だけあげなければカロリーが上がってもいいのではないか、と考えてもおかしくないと思います。

妊娠糖尿病で、糖質制限をして血糖値が正常になり、元気な赤ちゃんを生んだ人達

一冊の本があります。

この本は、糖質制限について書かれた本だと思っていましたが、実は、妊娠糖尿病についての本です。著者である宗田哲男先生は、産婦人科医の先生です。

先生がこの本を書こうと思ったのは、妊娠糖尿病で苦しむ妊婦さん達をたくさん見てきたからです。

世の中には、糖質制限を謳う本がたくさんありますが、ちょっと首を傾げてしまう本が多い事も事実です。しかし、この本は、著者が実際に診た妊婦さんの話し、実際に自分でデータを取って書かれた内容です。

つまり、冷静に、客観的にデータを根拠にして書かれています。

この本の第10章には、不妊治療に苦しみ、ようやく妊娠して2型糖尿病が判明した下城さんの話が紹介されています。

彼女は、担当医師から匙を投げられ、都立病院へ転院を勧められました。絶望感の中、迷ったあげく糖質制限を実行して、たったの3ヶ月で血糖値が正常になったのです。そして2890gという元気な赤ちゃんを出産しました。

他にも糖尿病の家系で、母親が2型糖尿病で出産時の体重が4800gという大きさで生まれてきたという黒柳さん。自身も妊娠時に糖尿病と診断され、インスリン療法を行なっていました。

彼女は、インスリン注射を自らの判断で中止、糖質制限の食事に切り替えました。インスリンを中止したのは、効果がないと判断したからです。もし、効果があれば続けていたのかも知れません。

インスリンによる眠気、倦怠感が本当に苦痛だったそうです。結局、血糖値が正常になり、無事に出産を終えました。

自身は4800gという大きな体で生まれてきましたが、出産した子供は2100gという小柄な赤ちゃんだったそうです。

そして、2型糖尿病であった母親も糖質制限の食事に切り替えて、インスリンから解放されたそうです。

その他、3名の女性について詳細に紹介されています。現在、妊娠糖尿病でカロリー制限やインスリン療法が上手くいっていない妊婦さんには、何らかの光明を与えてくれる事例ではないかと思います。

妊娠して糖尿病になって苦しんでいる時のまとめ

  • 自分の身長と体重から1日に食べていいカロリーを計算し、その範囲で食事をする。
  • 妊娠で糖尿病になったら、食事のカロリー制限をする為に食事のカロリーと栄養素を知っておく。その上で、食べていいもの、食べていけない物をきめる。
  • 妊娠で糖尿病になった人は、血糖値が下がらない時にはインスリン療法を勧められる場合がある。
  • 妊娠糖尿病は、インスリンが不足しているのが原因ではなく、インスリンが効かない体質になると言うのが原因である。
  • 妊娠で糖尿病になった人で、糖質制限で症状がよくなるというケースが報告されている。
  • 妊娠で糖尿病になって、自分の体や赤ちゃん、出産が心配になった時は、両方の医師の意見に耳を傾けてみる。
  • コレステロールが悪玉という説が今では否定されているのと同じく、糖尿病の「食事の糖質制限」も見直され、脚光を浴びつつある。

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