妊娠して糖尿病がわかる検査の種類、胎児への影響を知っていれば安心

妊娠してから糖尿病と診断される「妊娠糖尿病」は、妊娠する前に糖尿病である妊婦さんと全く分けて考えられます。

妊娠してから糖尿病になるのは、お腹の赤ちゃんが出すホルモンが、お母さんが出すホルモンの邪魔をして、血糖値と呼ばれるエネルギーの代謝が出来なくなっている状態です。

しかし、今や妊婦さんの8人に1人がなるといわれている妊娠糖尿病は、そのまま放っておく症状でもありません。そのままにすれば、お腹の赤ちゃんによくない影響を与えてしまいます。

この記事は、そんな妊娠糖尿病の検査について、受けた記憶もないので心配だと思う人や、検査に引っかかって不安で押しつぶされそうだと思う人に、少しでも役に立つ情報を集めました。

この記事を読む事で、余計な心配を払拭し、安心して、お産を迎える事ができるようになります。

妊娠 糖尿病の検査はいつするの?検査した記憶がないと不安になる前に

妊婦さんの中には、出産を控えて病院に通っているのに、糖尿病の検査を受けた記憶がなくて心配になる人もいるようです。

また、尿検査で尿糖が陰性なのに、糖尿病の目安となる血糖値の数値で引っかかったり、あるいは、尿糖が陽性となったために、糖尿病の心配をしたりする妊婦さんもいるようです。

結論から言えば、尿検査では、妊娠した後の糖尿病の診断はできません。糖尿病の診断には、妊婦さんから採血した血液が必要なのです。

妊婦さんは全員、妊娠初期と中期に血糖値の検査を受けています

食後に特に時間を決めないで採決した時の血糖値を随時血糖といいます。医師は、妊娠初期の検診の採血でまずこの値を見ます。

血糖値は、食後1時間から2時間がピークになりますので、朝食の時間のすぐ後に採血した場合は高い値がでてしまいます。また、検査前の食事の糖質が多くても値は高くなります。

妊娠中期(24〜27週)では、妊婦さんに50gのブドウ糖を摂ってもらい、1時間後に血糖値を測るという検査をします。これをグルコースチャレンジ、あるいは経口ブドウ糖糖負荷テストと呼びます。

初期、中期においても、値が異常と思われる妊婦さんがでてきたら、さらに細かい検査をしていきます。これをスクリーニングといいます。

スクリーニングとは、妊娠糖尿病の疑いのある人をピックアップする目的の検査です。これで陽性になった人は、75gのブドウ糖でテストします。こうして、妊娠糖尿病の早期発見が可能となっています。

参考 妊娠前・妊娠中の血糖測定 東京女子医科大学病院

そのため、妊娠糖尿病と診断される人が昔より多くなっています。 統計的には、妊婦さんの8人に1人が妊娠糖尿病になる確率です。

再検査の費用は、再検査の回数、病院などによっても異なりますが、1回3000円程度から8000円程度のようです。健康保険は適用されますのでそれほど高額にはなりません。

再検査で異常なしもあるので、不安になりすぎないことが大事

スクリーニングというのは、ふるい分けですから、時に再検査を繰り返します。最終的に異常なしというこも多くありますので、早くから検査に引っかかっても、必要以上に心配する必要はありません。

また、仮に妊娠糖尿病と診断されても、食事で血糖値はコントロールできます。妊婦さんの12人に1人が妊娠糖尿病と診断されますので、あまり落胆しないことです。

妊娠 糖尿病の再検査対策は、食事のカロリーと糖質などを控え、食生活を見直す

妊娠糖尿病の検査に引っかからないように対策をするというより、お腹の赤ちゃんのために、お母さんの血糖値をコントロールしようという気持ちが大事です。

妊娠糖尿病は、お母さんのホルモンより、赤ちゃんのホルモンの作用が強く、血糖値がコントロールできないという症状です。決して、お母さんの体に異常があるわけではないと考えるべきです。

ですから、妊娠中だけでも、糖質の多い食事を控えたり、分食するなど食事の回数を分けて、血糖値が上がりすぎないようにコントロールします。

前の記事 妊娠で糖尿病に苦しむ人は食事を替えれば赤ちゃんを元気に出産できる

切迫早産の診断をきっかけに妊娠糖尿病になることも

妊娠22週から37週未満で産まれてしまうのを「早産」と言います。そして、早産になりそうな状態を「切迫早産」といいます。

「早産」は、赤ちゃんが早く生まれてきてしまうので、赤ちゃんの健康にとってよくありません。そのため、早産を避ける為に判断されるのが「切迫早産」です。

22週以降で「切迫早産」と判断された場合、赤ちゃんが早く生まれてこないように、お腹の張りを止めるために点滴を24時間投与し、安静にします。

点滴はブドウ糖が含まれますので、長期に安静にすると運動不足も重なって、血糖値が上がってしまう事があります。その為、妊娠糖尿病と診断されてしまう事があります。

この場合も、特に母体に問題がある訳ではありません。しかし、お母さんの血糖値が高くなってしまっているので、血糖値をコントロールする必要はでてきます。

妊娠 糖尿病 赤ちゃんへの影響は?

妊娠して、初めて糖尿病となる妊娠糖尿病は、赤ちゃんへの影響もでてきます。

しかし、妊娠の際に糖尿病と診断されるのは3種類あります。

一つ目は、妊娠の前に糖尿病である「糖尿病合併妊娠」、二つ目は妊娠前に糖尿病であることが診断されていなかったが、その疑いのある「妊娠中の明らかな糖尿病」、そして三つ目は、妊娠中に、胎児のホルモンの影響で血糖値の代謝が上手くいかなくなった「妊娠糖尿病」です。

血糖値がコントロールできれば、奇形児の確率は、糖尿病でない妊婦さんとほとんど変わらない

よく、妊娠糖尿病は、奇形児の出産の確率が高くなると言われていますが少し誤解があります。

妊娠初期の胎児の器官形成期(赤ちゃんとして体が出来上がってくる時期)に血糖値がコントロールされていれば、糖尿病でない妊婦さんと奇形児発生のリスクにほとんど違いはありません

では、奇形児の発生リスクが高いと言われているのはなぜでしょう?実は、奇形児の発生リスクが高いといわれているのは、妊娠前に糖尿病を発病している「糖尿病合併妊娠」での数字です。

従って、妊娠後に胎児のホルモンの影響で血糖値の代謝異常と診断される妊娠糖尿病での数字とは異なります。

ですから、胎児の期間形成期である妊娠12週までの妊娠初期に、特に血糖値の異常がなければ奇形児の確率は、そうでない普通の妊婦さんとほとんど変わりありません。

「糖尿病合併妊娠」であれば、妊娠を考えている段階で、血糖値が高くならないように気をつけなくてはいけません。しかし、妊娠前に糖尿病と診断されていなければ、そのようなリスクは低いといえるでしょう。

参考 糖尿病があれば赤ちゃんに奇形ができると聞いて心配なのですが?
日本糖尿病/妊娠学会

糖尿病に妊娠後期で診断された時の胎児の奇形リスクは?

現在の医学の進歩は目覚ましく、妊娠12週にはエコー検査でほぼ先天奇形や先天性異常が分かるようになりました。

(参照)奇形の赤ちゃんはなぜ生まれるのか – J-Stage

妊娠12週までになんらかの異常が確認できなければ、先天異常については、それほど心配することはないともいえます。妊娠中絶は12週までが望ましいといわれていますが、その12週頃には、だいたいの先天異常についてはわかるということです。

ダウン症についても、妊娠16~17週には、羊水検査をすれば99%の確率でわかります。

したがって、妊娠初期の血液検査で、血糖値がそれほど高くなかったと診断された妊婦さんが、妊娠後期になってから妊娠糖尿病の診断を受けるような場合、妊娠初期の血糖値がそれほど高くなかったわけですから、普通の妊婦さんと比べてリスクにほとんど違いがないと考えていいでしょう

それにすでに妊娠12週を超えて、エコー検査で特に異常が見つかっていなければ、それ以降に妊娠糖尿病の影響で先天異常が現れるということはないと考えて差し支えないでしょう。

妊娠 糖尿病で障害児の可能性は?今のところ根拠はない

アメリカにおける研究で「妊娠26週までに母親が妊娠糖尿病を発症していた場合、そうでない母親に比べて、何らかの程度の自閉症を発症する率が42%高いことが分かった」という発表がありました。

(参考記事)妊娠糖尿病が児の自閉症リスクに

しかし、これは、観察研究であって、この発表の結論でも「妊娠糖尿病と自閉症の直接の因果関係を証明するものではない。」と結んでいます。

したがって、妊娠糖尿病と障害児の可能性は今のところ根拠がないと考えていいでしょう。しかし、この研究でも触れられていますが、胎児の器官形成期である妊娠初期の血糖値については十分気をつけなければいけません。

そのためにも、妊娠初期の検査では、血糖値について気にしたほうがいいでしょう。不安であれば、自分から医師に尋ねてみるのがいいと思います。

妊娠糖尿病で気をつけるべきその他の合併症は?

妊娠して糖尿病と診断されると、赤ちゃんへの影響だけでなく、母体にも影響が出てきます。それは、以下にあげられるようなものです。

妊娠糖尿病になると何がおこるのですか?
お母さんが高血糖であると、おなかの中の赤ちゃんも高血糖になり、さまざまな合併症が起こり得ます。
お母さん:妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症、腎症など
赤ちゃん:流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、胎児死亡など
 しかし、これも適切な血糖コントロールで回避できます。妊娠糖尿病は、お母さんのホルモンが、胎児のホルモンの影響を受けて、上手くコントロールできなくなっているだけだからです。
通常の糖尿病と違って、血糖コントロールが上手くいけば、母体、胎児とも健康な状態で出産できます。

妊娠糖尿病では、帝王切開の可能性が高くなる

出生時体重が4,000g以上の赤ちゃんを巨大児といいます。妊娠糖尿病では、血糖値が高くなるため、巨大児の出生確率が高くなります。

その為、妊娠糖尿病とはいえ通常は経腟分娩で行いますが、帝王切開での分娩の可能性は高くなります。

帝王切開は、通常でも健康保険の対象となります。また、民間の医療保険の対象にもなります。ですから、費用の心配はそれほど要らないでしょう。

妊娠 糖尿病の検査、胎児への影響のまとめ

  1. すべての妊婦さんは、初期に血液検査、中期にグルコースチャレンジの検査を受け、陽性の人がさらに検査を受ける
  2. 切迫早産の心配があっても、妊娠糖尿病を診断されることがある
  3. 胎児の奇形のリスクは、妊娠12週くらいまでのエコー検査で異常が見つからなければ、ほとんど心配はいらない。
  4. 同様に、妊娠後期で妊娠糖尿病を発症した時、妊娠12週くらいまでのエコー検査で異常が見つからなければ、ほとんど心配はいらない。
  5. 妊娠糖尿病で障害児の可能性は、今のところ根拠はない。
  6. 妊娠糖尿病では、様々な合併症の危険があるが、血糖値コントロールで回避できる。

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