人を動かす「仕掛け」 あなたはもうシカケにかかっている

本屋を彷徨っていたら、面白そうなタイトルだなと立ち止まって、帯のフレーズを見て思わず手に取ってしまった。最初の感想は、よくある心理学の本かなと。心理学の本は個人的に役に立たないものが多いので、パラパラめくって終わる事が多い。だが、この本はちょっと違った。

まず、本の表紙にある「警告!カバーをはずすべからず」というのを見て、お約束通りカバーを外してみた。

そこには、「人はやるなと言われると、やりたくなる」と説明が書かれてあった。それはカリギュラ効果というらしい。なんだ、これは心理学の本か、と思ってぱらぱらめくってみた。ちょっとしたビジネス本かと思っていたからだ。

カリギュラ効果とは、調べてみると分かるが、禁止されるほどやってみたくなる心理現象のことである。だが、これは単に名前をつけただけだ。何故、そうしたくなるのかの説明は全くない。これがよくある心理学の本の特徴だ。

何故、人は禁止される程やってみたくなるのか?という問いに対する答えがあって初めて学問と呼べる。この何故という問いに対する答えは、カリギュラ効果という法則のようなものがあって、それが理由だ、というのが心理学の立場のようだ。

では、この本の帯に「カバーをめくってください」と書いてあればどうだろう。私ならめくってしまう。禁止されなくてもめくってしまう。

あるいは、お風呂の洗剤に書いてある「まぜるな、危険」という文字を見て、主婦の方々は酸素系と塩素系の洗剤を混ぜ合わせてみたくなるのだろうか?

もし、それらが例外だと言うのなら、それはそもそも法則だとか効果だとか呼ぶにふさわしくない。例外だらけの法則や効果など、法則でも効果でも何でも無い。

遥か昔、高校生だった頃、心理学に興味を持った時期がある。心理学に関する本は、お金があまりなかったので、ほとんどが立ち読みであったが、古本屋で安いものは実際に購入したりと、それなりに目を通した方だと思う。

そこで、その時に思ったのは、心理学と言うのは、科学になりたくてなれなかった学問の一つだなという感想を持ったことだ。

心理学の実験などは面白いものも多い。だが人間の心を対象にやる実験などに100%の再現性などでてくるわけがないので、理系の人間からすると、それは何ら法則性の発見にはほど遠いと思ってしまう。

そのような心理学の本は、はっきり言って面白くない。だが、この本は違った。カリギュラ効果という言葉で期待が萎んだのだが、内容は期待を裏切って非常に面白かった。

というのは、この本は実例が豊富に紹介されていて、実際に人を動かす効果のあったものを紹介しているからだ。しかもそれが、確かにそうだと思えるような実例が満載だったのだ。

例えば、面白かったのは、ゴミがたくさん捨てられている所にある絵を置くだけで、それがピタッととまったというような話だ。読んでみれば、きっと誰もが納得すると思う。まるでクイズに対する答えを教えられたような納得感がある。

それは何故かと言うと、自分がもし何げにゴミを捨てようと思った時に、その絵があれば、確かに捨てる事を躊躇するし、恐らく捨てないだろうと思うからだ。

これは、法則とか言う訳でなく、自分がそうしたくない理由があるからだ。もっといえば、自分がそうしない習慣があるといった方がいいかもしれない。

例えば、トイレから出てきて手を洗おうとする。しかし、水が出ない。そうしたら、できるだけその手で自分のものを触らないように気をつける。どこかで手を洗うまで、自分の手は汚れていると思っている訳だ。水が無いなら、ウェットティッシュを使って拭こうと考え、自分のもっている鞄にできるだけ触らないように、指の先端をちょっとだけ使って、できるだけ触れないように何とか上手く出そうとしたりする。

あるいは、お気に入りの鞄をもって出掛ける。ちょっと手が疲れて、鞄を置きたいと思った時に地面に直接付けたくないと思う。床は汚れていると思うからだ。イスなどがあれば、そこに置くのだが、置く所がなければ疲れて鞄を置きたくても我慢してもっている。

人によっては、電車のつり革につかまりたくないと思っている人もいるだろう。つり革には誰が触ったか分からないと考えているからだ。この場合は、汚れている可能性が非常に高いと思っているのだろう。

こういった人間の心理というのは、人によって違う。だが、多くの人が多分そう考えるだろうと思う事を上手く利用するのだ。だから、ゴミを捨てて欲しくない場所には、そこがゴミを捨てるのにふさわしくない場所だと言う事を思ってもらえばいいわけだ。

イスに鞄を置こうとした人に、そのイスは床と同じくらい汚いですよと教えてあげるのだ。こうすることで、その人はイスに鞄を置くのを止める。

そんな感じで、この本は楽しく読めるし、日常的に困っていることを解決してくれるヒントにもなると思う。実際に自分の日常生活に応用がきくような事例がたくさん載っている。

気になった人は是非、一読してください。マンガ形式なのでとても読みやすいですよ。

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